エリザベス王朝のリュート音楽 解説

 

8世紀頃アラビア人によってヨーロッパへ持ち込まれたリュートは、16世紀にはダ・ヴィンチやガリレイなど、ほとんどの文化人が演奏するまでに流行します。16世紀後半になってイギリスに持ち込まれたリュートはさらに隆盛を来たし、まさにルネッサンスリュートの黄金時代と言えます。エリザベス女王(I世)は常時4人のリュート奏者を召抱え、毎晩寝室で彼らに交互にリュートを演奏させて眠りについたと言います。リュートはシェイクスピアの演劇などにも幅広く使われ、ヨーロッパ中で今のピアノやギターの役割をし、「グリーンスリーヴズ」やダウランドの「涙のパヴァーン」(パヴァーナ、パヴァーヌとも呼ばれる)をはじめとするポピュラーな名曲が数多く残されました。いわゆるルネッサンスリュートの最盛期です。舞曲としては「パヴァーン」と「ガリアード」が大変ポピュラーで、エリザベス女王は毎朝運動のために何曲も「ガリアード」を踊ったという記録があります。
ソロ曲だけで無く、この時代はリュートの二重奏の全盛期でもあります。ジョン・ジョンソンをはじめとし、ロビンソンやダウランドなど、多くのリュート奏者が二重奏曲を作りました。一方が旋律を弾いている間は他方が伴奏する、そしてそれを交互に行う形式の曲と、一方の奏者のみが旋律を弾き、片方は短い伴奏を繰り返して弾くグラウンドと呼ばれるものもあります。それ以外にもファンタジアと呼ばれる両方のリュート奏者が対等なパートを弾く、対位法の曲もあります。しかも技術的に難しい曲ばかりでなく、アマチュアの方々にも楽しめるものも少なくありません。
今回のコンサートでは前半は佐藤豊彦によるソロ曲を、後半は櫻田亨の共演による二重奏曲をお楽しみ下さい。
エリザベス王朝のリュート音楽
Elizabethan Lute Music

リュート・ソロ: 佐藤豊彦    Lute solo: Toyohiko SATOH  
1. ホルボーン Anthony Holborne (?-1602)
   パヴァーン(パヴァーナ、パヴァーヌ) Pavan
   ガリアード Galliard
2.ロビンソン Thomas Robinson (London 1603)
   スペイン風パヴァーン The Spanish Pavin
   ガリアード A Galliard
3. ダウランド John Dowland (1563-1626)
   涙のパヴァーン Lachirimae
   蛙のガリアード    The Frog Galliard
   ファンシー A fancy
4. カティング Francis Cutting (ca.1600)
   ウォルシングハム Walsingham
   ドイツ舞曲 Alman
   グリーンスリーヴズ Greensleeves
――――――――――休憩――――――――――              
リュート・二重奏: 佐藤豊彦 & 櫻田 亨
Lute duet: Toyohiko SATOH & Toru SAKURADA
1. ジョン・ジョンソン John Johnson (16C)
   フラット・パヴァーン The flat Pavan
   フラット・ガリアード Galliard to the flat Pavan
2. ロビンソン Thomas Robinson
   ファンタジー Fantasy
   トイ(遊び) A Toy
3.モーリー Thomas Morley (1557/8-1602)
   アルカディアの森の精(ギリシャ神話) La Sampogna
ファンタジア     Fantasia
4.作者不詳 Anonymus (ca.1600)
   トランペット風パヴァーン De la Tromba Pavana
   ドゥルーリーの調和   Drewrie’s accordes
5. ダウランド John Dowland
帰っておいで(二重奏編曲:作者不詳) Come again
ウィロゥビー卿のご帰還 My Lord Willoughby’s welcome home

プロフィール
佐藤豊彦(ルネサンスリュート)
 世界のリュート界の第1人者として国際的に活躍している佐藤豊彦は、立教大学在学中に皆川達夫氏から啓蒙を受け、1968年にスイス、バーゼルのスコラ・カントルムに留学した。1971年に世界で初めてのバロックリュートによるLPをスイスで録音してデビュー。1973年にはオランダ王立音楽院の教授に抜擢され、2005年に退官するまでの30年間以上に渡って、世界各国で活躍する多くの後輩リュート奏者を育てた。1982年カーネギーホールでのリサイタルは、ニューヨークタイムズに写真入で絶賛を博した。録音では1980年にオランダでエジソン賞を、同年日本で文化庁芸術祭優秀賞を、さらに1983年と2008年の2回にわたってレコード・アカデミー賞を受賞した。作曲家としても世界各地の音楽祭に参加し、自作品による2枚のCDもある。数多くのソロとアンサンブルCDの他に教則本や曲集などの出版物もある。2000年には「リュート&アーリーギターソサエティ・ジャパン」の会長に就任し、音楽家のための禅茶道「楽禅古流」を創始(茶人名:豊蘭)して、日本の伝統的な精神文化との融合を図りながら、現在も世界各地で活躍している。

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